財団の活動
研究の助成(第9期)
公益財団法人 大隅基礎科学創成財団
第9期(2025年度)研究助成 選考結果について
第9期研究助成でも例年通り、一般生物学研究(基礎科学(一般))、及び酵母を対象とした基礎研究(基礎科学(酵母))の公募を行いました。2025年5月7日~6月30日の公募期間に、全国の研究者から、基礎科学(一般)185件、(酵母)34件の申請を受け付けました。基礎科学(一般)については、今期より新たに、助成金上限1,000万円の「A枠」と上限300万円の「B枠」とに分けて募集を行った結果、A枠82件、B枠103件の応募がありました。本財団の選考委員による厳正な審査を行って助成候補を選定し、理事会の承認を得て、基礎科学(一般)10件(内訳:A枠4件、B枠6件)、(酵母)3件に決定しました。今回決定した助成金額(助成期間2年)は、基礎科学(一般)4,800万円、基礎科学(酵母)1,200万円となりました。
基礎科学(一般) 10件
(氏名五十音順)
※横スクロールで閲覧ください。
| 氏名 | 所属 | 研究課題 | 選考委員会評価 |
|---|---|---|---|
| 荒木 喜美 A枠 |
熊本大学 | KRAB- ZFP遺伝子群はなぜ高度に重複し数を増やす必要があったのか?本来の役割にせまる。 | トランスポゾンを不活性化するKRAB-ZFP群が雑種強勢をもたらしているなど重要な可能性を持つ研究である。長年遺伝子改変マウス作製支援業務を並行して行ってきた際に得られた経験が含まれた提案である。 |
| 伊藤 悦朗 B枠 |
早稲田大学 | 「勉強とは勉めを強いること」を考慮した学習記憶の新規分子機構 | 新奇体験 → 神経活動増加 → DNA2本鎖切断 → 遺伝子発現 → シナプス可塑性 → 記憶形成 という説があるが、それを単純な中枢神経系を持つモノアラガイで検討する。 |
| 大久保 範聡 A枠 |
東京大学 | 性染色体構成がメス型のオスメダカがモテないのはなぜか | 性決定に関わる遺伝子と性的行動に関わる因子・求愛行動の連関を探る非常にユニークな研究である。 |
| 大沼 耕平 B枠 |
島根大学 | ホヤ幼生の脳発生における神経細胞の分化と動態の分子機構の解明 | 脳にある神経細胞数が100個未満で細胞系譜のわかっているホヤを使って、個々の細胞ごとの転写因子とシグナル分子の発現パターンを網羅的に調べ、神経細胞の発生に必須な因子とその発現制御ネットワークを特定するという意欲的な提案である。 |
| 荻野 肇 B枠 |
広島大学 | ゲノム重複に伴うエピゲノム抑制と遺伝子配列進化の実験的研究 | ツメガエルの交雑4倍体、交雑8倍体の作出に成功しており、交雑倍数化にともなうエピジェネティック抑制の分子実体を解明しようという提案で面白い。 |
| 澤 斉 B枠 |
国立遺伝学研究所 | 体軸情報による細胞極性の方向制御 | 線虫を対象として、受容体の勾配を持った発現が体軸の極性方向を制御しているという独自のモデルを検証しようという提案である。新規性が高く、研究計画も詳細にねられている。 |
| 深澤 壽太郎 B枠 |
広島大学 | 揮発性植物ホルモン様分子による成長促進制御機構の解明 | ジベレリン経路の研究で実績のある申請者が、花成を誘導するジベレリン経路を介した未知の揮発性化合物を突き止める計画である。 |
| 藤瀬 賢志郎 B枠 |
金沢大学 | シナプス超微構造の非神経細胞内再構成による形成機序解析 | 再構成された構造の機能的な妥当性が気になるが、独特のアプローチで重要な成果につながる可能性はあると思われる。 |
| 三宅 親弘 A枠 |
神戸大学 | 葉緑体チラコイド膜∆Ψ形成を担う未同定電子伝達経路の分子実体の解明 ~フェレドキシンからPQへの電子流の実体に迫る~ | 光合成における循環型の電子伝達の正確なアッセイ法の確立を元に、疑問の持たれていた還元型フェレドキシンの酸化とチラコイド膜の∆Ψ形成に関わる因子の同定を目指す計画。光化学反応系の重要な未解明問題について、挑戦する。 |
| 吉本 光希 A枠 |
明治大学 | 植物オートファジーによる光受容体の品質管理 ~その分子基盤と生理的意義の解明~ | オートファジーが特異的にフィトクロームだけに働くか、など不安はあるが、その確認も含めて支援する。 |
基礎科学(酵母) 3件
(氏名五十音順)
※横スクロールで閲覧ください。
| 氏名 | 所属 | 研究課題 | 選考委員会評価 |
|---|---|---|---|
| 神 唯 | 日本歯科大学 | オルガネラは創られる:新規液胞生成分子基盤の解明 | 高速超解像顕微鏡を用いたライブセルイメージングにより、エンドソームから液胞が形成される過程を可視化することに成功している。研究計画はオルガネラを「細胞内で動的に創出され、細胞機能を制御する構造」と捉え、新たに見出した液胞生合成過程の分子機構を明らかにしようとするものであり、真核生物共通のメカニズムの解明に繋がるのか、興味が持たれる。 |
| 福田 良一 | 東京大学 | 二形性酵母Yarrowia lipolyticaのユニークなコロニー形態の形成機構とその生物学的意義の解明 | 二形性酵母Y. lipolyticaにおいて、細胞表面のユニークな突起状構造を見出している。細胞壁成分のリモデリングという観点でその形成機構を解析するとともに、環境応答におけるこの構造の生理機能を明らかにしようという研究計画であり、新規細胞間コミュニケーション機構の発見に繋がることが期待される。 |
| 船戸 耕一 | 広島大学 | 代謝が関与する双方向膜交通の調節機構の解明 | 脂質および脂質修飾タンパク質の機能に関する優れた業績を有し、脂質を介した細胞内トラフィック調節機構を新たに発見している。これまでの研究成果から得た「小胞体―ゴルジ体間の輸送が脂質の量的バランスにより調節されている」という仮説に基づき、環境変化に応じた膜交通の制御における脂質代謝の役割の解明を目指す、独創性の高い研究計画である。 |