財団の活動

研究の助成(第4期)

公益財団法人 大隅基礎科学創成財団
第4期(2020年度)研究助成 選考結果について

大隅基礎科学創成財団の第4期研究助成では、一般生物学研究(基礎科学(一般))、及び酵母を対象とした基礎研究(基礎科学(酵母))の公募を行いました。2020年5月7日~6月30日の公募期間に全国の研究者から、基礎科学(一般)124件、基礎科学(酵母)28件の申請を受け付けました。本財団の選考委員による厳正な審査を行って助成候補を選定し、理事会の承認を得て助成対象を以下のように、基礎科学(一般)9件、基礎科学(酵母)3件に決定しました。

今回決定した助成金額(助成期間2年)は、基礎科学(一般)4,880万円、基礎科学(酵母)1,200万円となりました。

基礎科学(一般) 9件

(氏名五十音順)

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氏名 所属 研究課題 選考委員会評価
河野 憲二 兵庫県立大学 生命理学研究科 真核生物eEF2に唯一存在する修飾アミノ酸ジフタミドの生理的役割の解明 申請者自身が発見し、長年謎として腑に落ちないまま残っていたeEF2の修飾アミノ酸ジフタミド構造の生理的意義の解明に向けた研究。準備段階でよいきっかけとなる知見を得ており、目的と焦点が明確な企画であり、新たな発見が期待できる。
小牧 伸一郎 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 ゲノム倍加植物の誕生に関わるMCC複合体の抑制機構 植物のゲノム倍化を制御する仕組みを、紡錘体形成チェックポイントの解除という独自の視点から解析する研究であり、植物のバイオロジーを進展させるものである。申請者が発見した現象であり、これまでの科研費研究によって準備ができている。
酒井 達也 新潟大学 理学部 植物の光屈性誘導機構の解明 未知な部分の多いオーキシンに依存しない植物の偏差成長機構に迫る研究である。研究環境が必ずしも良くない中、この分野でクオリティの高い研究を続けている実績があり成果が期待できる。
高岡 勝吉 徳島大学 先端酵素学研究所 哺乳類胚における発生休止の分子メカニズム マウス発生休止胚における細胞活動休止の分子機構を明らかにするという提案。左右軸形成とは独立したLeftyの新しい機能、そのシグナル伝達機構の解明が期待できる。複雑な現象であるが着実な研究が期待できる。
西村 芳樹 京都大学 大学院理学研究科 母性遺伝の基盤としてのオルガネラDNA複製分解機構を探る クラミドモナスのミトコンドリアDNAの母性遺伝について、分子遺伝学的手法を駆使した研究を進める企画である。雌の葉緑体DNAの保護・増幅機構、雄の葉緑体DNAの選択的破壊、への着眼点もユニークであり、関連すると思われる遺伝子の変異体も単離されている。
星 元紀 お茶の水女子大学 サイエンス & エデュケーションセンター 刺胞動物における卵外被の構造と機能 クラゲやサンゴなどの刺胞動物の受精は、一般によく研究されている後生生物とは大きく異なり、多様であるが、よい実験系がなくて分子生理学的な知見は非常に少ない。これは受精の分子生理学を知り尽くした研究者が下準備を重ねてきて、実験を実施できるレベルまで持ってきたうえでの企画であり、質実な少額の申請であるが、成果が期待できる。
堀 沙耶香 東京女子医科大学 医学部 逃避行動を最適化する原型回路の分子基盤の解析 線虫を使って逃避行動最適化を評価する系を構築し、関与する遺伝子を同定し、シナプスと個体レベルで作動原理を解明する研究である。申請者は行動最適化評価系を独自に開発した。ヒトの行動の理解にも示唆を与える可能性もある研究と言える。
宮成 悠介 金沢大学 ナノ生命科学研究所 転写反応の現場を理解する 液相分離の転写複合体の分子標識による解析であり、実績のある研究者による研究企画である。独自の手法を駆使して1分子レベルでクロマチン上の転写複合体を解析しようとする挑戦的な研究である。
山崎 正和 秋田大学 大学院医学系研究科 長年ベールに包まれた未知のPCP制御機構の解明 コーミングと呼ぶ細胞極性に関する興味深い表現型を見出しており、数理モデルも含め、メカニズムについてもよく洞察されている。この研究の成果によって、他の動物や組織における配向(極性)の研究にも波及する可能性がある。
基礎科学(酵母) 3件

(氏名五十音順)

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氏名 所属 研究課題 選考委員会評価
佐藤 政充 早稲田大学 先進理工学部 タイムラプス・シングルセル発現解析から見えてきた細胞の休眠と目覚めの分子機構 胞子の発芽という現象のsingle cell analysis に着目しユニークな高い研究成果。タイムラプス・シングルセル発現解析を用いて、酵母の胞子からの発芽にはヒストンH3c1が重要であることを明らかにしている。最新の技術を駆使して、古くからあるが十分解明されていない問題に取り組んでいる。胞子からの発芽という現象に重要な遺伝子がさらに特定できる可能性があり、非常に興味深い研究内容である。
細見 昭 信州大学 農学部 出芽酵母における小胞体内へのリーダーレスタンパク質輸送 シグナルペプチド非依存的な小胞体輸送機構を発見。正常タンパク質もこの経路で運ばれうることを見出したことを評価したい。今回の成果に関する論文がJBCに最近アクセプトされた。さらに新たな展開が期待される。ste24におけるシグナルに依存しないERへの輸送という発見が、野生株でも起きているのかが今後の生理現象としての鍵。
守屋 央朗 岡山大学 大学院環境生命科学研究科 過剰発現が有利に働く遺伝子の体系的探索により理解する酵母の耐ストレス生理 独自のADOPT系により酵母ストレス耐性機構の未知の部分に迫ろうとしたもの。独自に構築した系により、ストレス耐性の生理を明らかにするための研究が展開されている。研究室外環境での酵母の生理を理解する上で、他の追随を許さない独自性がある。