財団の活動

研究の助成(第7期)

公益財団法人 大隅基礎科学創成財団
第7期(2023年度)研究助成 選考結果について

大隅基礎科学創成財団の第7期研究助成では、一般生物学研究(基礎科学(一般))、及び酵母を対象とした基礎研究(基礎科学(酵母))の公募を行いました。2023年5月8日~7月3日の公募期間に全国の研究者から、基礎科学(一般)134件、(酵母)23件の申請を受け付けました。本財団の選考委員による厳正な審査を行って助成候補を選定し、理事会の承認を得て、基礎科学(一般)8件、(酵母)3件に決定しました。今回決定した助成金額(助成期間2年)は、基礎科学(一般)4,800万円、基礎科学(酵母)1,200万円となりました。

基礎科学(一般) 8件

(氏名五十音順)

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氏名 所属 研究課題 選考委員会評価
青木 考 大阪公立大学 茎寄生植物アメリカネナシカズラの吸器形成開始における接触刺激受容機構 寄生開始に必要な因子候補としてCaチャンネルを見出したので、その下流での遺伝子発現の解析を行う。すでにあるメカノセンサーを見出している。さらに研究の発展が期待できる。
大久保 奈弥 東京経済大学 サンゴの一種をサンゴのモデル実験動物にするための生活史の解明とゲノム解析 実験室で容易に飼育、繁殖できるサンゴを発見し、未開拓のサンゴの発生、生活史、保全の分子生理学研究の道を開く。
大瀧 丈二 琉球大学 力学的形成体(メカニカル・オーガナイザー)の解明:チョウの色模様形成のメカニズムを探る 蝶の色模様はクチクラと色細胞の接触の力学的ストレスによって形成される、という独自の仮説を立証する。立証は簡単ではないが、証明されれば発生における新しい機構の発見となる。
小柳 光正 大阪公立大学 原始的な多細胞動物・板形動物に着目した動物の光受容システムの起源の解明 光受容体オプシンは刺胞動物にあり海綿動物にはない。その間の板形動物に1アミノ酸置換でレチナールを結合して光受容するGPCRを発見した。これを手掛かりとして生物の光感受能の起源を探るユニークな研究である。
戸谷 美夏 早稲田大学 卵母細胞と母体のコミュニケーションを橋渡しする微小管の機能 ある微小管結合タンパク質の欠損がメスにだけ不妊をもたらすという発見から、卵母細胞と母体の顆粒細胞をつなぐブリッジのような構造を通じた物質交流が卵母細胞の成熟に必要だと考え、その具体的な機構を解明しようという独自性の高い研究である。
福田 七穂 新潟大学 mRNAの非翻訳領域が担う遺伝子制御の機構と生理的役割 神経軸索末端までmRNAが運搬され翻訳される仕組みと意義を、マウス遺伝学を自在に使って制御因子hnRNPの標的となるmRNAの同定などを軸に解明する。準備もよく新たな解明が期待できる。
水多 陽子 名古屋大学 植物の一対一受精を制御する雌雄細胞間シグナル伝達機構の解明 植物における多精拒否である多花粉管拒否の分子機構を、新たに開発したイメージング技術を駆使して解明する。すでに花粉管受容と内容放出に関わる因子が同時に多花粉管拒否にもかかわることを発見しており、発展が期待できる。
山岡 尚平 京都大学 花粉の生殖細胞分化と胞子非対称分裂の分子機構の解析 花粉管細胞内に雄源細胞が取り込まれ、「細胞の中の細胞」が形成される過程の研究は進んでいなかったが、これを新規同定したマスター制御因子BNB-LRLの機能の解明から明らかにする。
基礎科学(酵母) 3件

(氏名五十音順)

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氏名 所属 研究課題 選考委員会評価
中村 太郎 大阪公立大学 分裂酵母胞子の形作りの分子メカニズム 酵母における胞子の形態形成という酵母にとっては基本的な生理現象に正当な分子細胞生物学からその生理学的意義を探ろうとするものである。申請者はこれまで分裂酵母の胞子形成機構を解析してきた実績を有しており、その切り口に新規性あることが評価され、今後の展開が期待される。
野田 健司 大阪大学 生体分子監視機構の実相 本申請者が独自に見いだしたオートファジー終結因子Tag1の同定を足がかりに、細胞内アミノ酸量の監視機構に関与するPib2とともにひろく細胞内部の細胞構成要素分子(生体分子)の状況を細胞がどのように感知し、細胞応答を制御するのか、その分子機構を明らかにしようとする意欲的な研究で細胞内制御の総合的な管理機構として独創性があり、今後の発展に期待する。
福田 智行 新潟大学 脂質膜リモデリング因子によるオルガネラの動態と機能の制御 ミトコンドリア分解に必要な因子として単離された脂質膜リモデリング因子を足場に他のオルガネラを含めた細胞内動態制御を解明しようとする課題で、脂質とオルガネラ機能制御との関連性の理解は生理的に重要な課題で今後の展開に期待が持てる。